1PN由来の胚盤胞について
こんにちは、培養室です。
みなさま、先週の台風は大丈夫でしたか? 大阪は直撃を免れたこともあって、幸い江坂のあたりはそれほどひどくなく済みました。それでも夜間は雨風がすごかったです。まだもう暫く過ごしづらい日があるとは思いますが、体調に気をつけながら元気に過ごしたいですね。
さて、今日は1PN胚についてのお話です。
1PN胚に関しては過去のコラムでも紹介したことがあるのですが、定期的に患者さんから質問をお受けすることもあり、論文の紹介も兼ねて改めてお話ししますね。
そもそも1PNとは?
まずPNとはprenucleusの略です。日本語では前核と呼んでいて、受精過程のたまごに観察することができます。
前核が2個あるなら2PN、3個あるなら3PN..…となり、「このたまごに前核がいくつ見えます(見えていました)よ〜」という意味になります。
一般に正常受精と呼ばれているたまごは2PNです。卵子・精子それぞれに由来する前核が2個確認できる状態です。
3PNは多精子受精(精子が2個以上卵子に侵入した)や、極体放出不全などが原因になって起こります。この時、たまごの中には過剰な遺伝子が含まれている可能性が高いため、当院では3PN胚を異常受精として培養を中止します。
3PN胚でも稀に正常胚が含まれているようですが、それを判定するにはPGSを行う必要があるため、実際に調べることは難しいのが現状です。
最後に、1PNは前核が1つだけ見えている状態です。
この時、たまごには前核1つ分の遺伝子量が含まれる可能性(=遺伝子が足りていない)と、前核は1つに見えているものの遺伝子の量はそれ以上ある可能性があります。また、1PN胚は従来の報告や知見により、胚盤胞率が低い反面、胚盤胞まで発育すれば、妊娠・出産の可能性が一定に見込めることが分かっています。
そのため、当院では胚盤胞まで発育した1PN胚は凍結・移植の対象として扱っています。また、2PN胚由来の胚盤胞がある場合の移植順は、発育過程やグレードなどを加味して判断しています。
参照
Cara K Bradley et al.,2017
(Clinical use of monopronucleated zygotes following blastocyst culture and preimplantation genetic screening, including verification of biparental chromosome inheritance.)