がん治療のため未成熟卵子を体外成熟させ凍結保存していた女性が出産に成功
こんにちは、培養室です。
今年は例年にない暖冬のためか、もう春がそこまで来ている気がします。不意に寒くなることもあるので体調管理に気をつけないといけませんね。
今回は海外での報告を紹介します。
フランスの研究チームは乳がん患者から採取した未成熟卵子を体外培養で成熟卵させ、凍結保存の後に融解した症例が、妊娠・出産に至ったと報告しました。
患者である女性は、化学療法による影響でがん治療後に自然妊娠できない状態でした。そのため、凍結保存していた卵子でトライすることになったようですね。がん患者の未成熟卵子を体外培養で成熟させ、凍結融解を経て妊娠・出産に至った症例は世界初だと紹介されています。
がん治療前の採卵には迅速さが求められます。通常の不妊治療のような卵巣刺激では、時として採卵まで時間がかかってしまい、デメリットになる場合もあります。当院でも、がん治療前の採卵を請け負っていますが、ランダムスタート法など症例ごとによりよい方法を医師が検討して実践しています。常に時間との勝負です。その点で、今回の成功は、時間がないために治療前の未受精卵凍結を諦めていたがん患者の方々に新しい希望になりそうですね。
参考文献、ページ:
https://www.afpbb.com/articles/-/3269416
M. Grynberg.(2020)”First birth achieved after fertility preservation using vitrification of in vitro matured oocytes in a woman with breast cancer.” Annals of Oncology