AIを使って精子を探す?
こんにちは、培養室です。
ゴールデンウィークですね、皆さんどこかにお出かけされましたか?(当培養室はいつも通り仕事です)
さて、先日行われた日本泌尿器科学会で、興味深いシステムが発表されていましたのでご紹介します。
精子発見、AIが手助け 不妊治療、人力作業の負担軽減
朝日新聞DISITAL(4/16)より(https://www.asahi.com/articles/ASL4D4CT5L4DPLBJ001.html)
まず記事内にさらっと出てくる無精子症について簡単にご説明しますね。
無精子症は一般に100人に1人程度、不妊治療中のカップルに限れば更にその割合が増えることが分かっています。原因は様々ですが、「閉塞性(精子が通過する経路に問題あり)」「非閉塞性(精子を作る能力に問題あり)」の2種類に大別されます。また、無精子症とは「精液中に精子が見られない状態のこと」を指し、精巣組織などには精子が存在している可能性があります。
無精子症の方、あるいは一部の重度OAT症候群の方に対して、精巣から直接精子の採取を試みるのがTESE(精巣内精子回収術)です。取り出された精巣組織を細切し、顕微授精に用いることができる精子を探します。
精子を探す顕微鏡の視野では、細切された組織片や白血球など精子以外の細胞、精子など多くの組織・細胞が入り混じった状態です。この中から精子を探し出すのは容易ではありません。記事のように、複数の培養士が数時間、時には1日掛かりでたったひとつの精子を探すことも間々あります。
今回発表されたシステムでは精子とそれ以外の細胞を予め機械に学習させ、精子の可能性がある細胞を画面上で知らせてくれるものです。判定自体はまだ培養士が行うようですが、精子があるかないかも判らない中で精子の見落としを可能な限り減らし、捜索の時間を短縮できるのは非常に良いことだと思います。