食生活と精液所見について(デンマークの研究)
こんにちは、培養室です。
早いもので、このコラムが始まってから3年以上経っていたようです(※特に記念日というわけではないです)。新しい知見が出てきたり、あるいは単純に書いたことを忘れていたりして、同じような話がぐるぐる回っていることもあるかと思いますが、マー3年も頑張ってるものねと思ってお目こぼしいただければ幸いです。
今回は、デンマーク人男性の食生活と精液所見の関連を調べた論文をご紹介します。
Association of Dietary Patterns With Testicular Function in Young Danish Men
期間は2017年7月〜2019年1月まで、若年男性(中央値19歳)の2935人を対象としました。BMIは78%の人が正常値でしたので、肥満や痩せの人が大勢いたということもないようです。対象の人たちの食生活を4パターン(西洋型/穏健型※/デンマーク様式/菜食)に分類し、食生活との関連を調べています。デンマークには兵役があり、18歳ごろに身体検査を受けるのだそうで、それに関連する形で調査を行ったようです。
※食事様式における穏健型(Prudent)とは、低脂肪の乳製品や全粒穀物、果物、鶏や魚、野菜を中心にした食事方式のことを指します。一方で西洋型とは、高脂肪の乳製品、高精製の穀物、加工肉、糖分が多い食事を指します。デンマーク様式とは、デンマークで食される伝統的な食事の形式(冷製の加工肉/魚、全粒穀物、乳製品など)です。菜食はいわゆるベジタリアンの人たちを指します。
総精子数では、西洋型とそれ以外では優位な差が見られる結果となりました。
穏健型 | 167×106/ml |
菜食 | 151×106/ml |
デンマーク様式 | 146×106/ml |
西洋型 | 122×106/ml |
総精子数の減少は以前よりも問題視されてきました。例えば、1973年と2011年それぞれの検査を比較すると、男性の総精子数が50〜60%減少したという報告があります。減少の要因は様々挙げられていますが、今回は食事に着目して調査したものです。ここまであからさまに結果が変わるというのは、少し意外でした。
なお、今回の調査は、あくまでデンマークの青年に限って行われたものです。また、例えば穏健型に分類された全員が、ジャンクフードを全く食べないかと言えばそういうわけではないでしょう。アジア人の集団で調べると違った結果になるかもしれません。普段から健康的な食事を心掛けている人は、そもそも生活の全般において気を配っているのかもしれません。ですので、ジャンクフードは絶対に食べてはいけない、というような極端なことは考えなくて良いと思います。
それぞれが無理のない範囲で、健康的な食事を心掛けていきましょう。