PRP療法はじめます。再生医療の生殖医療への応用
PRP療法とは、自分の血液を採取し、遠心分離をして、PRP(多血小板血漿)とよばれる成長因子が豊富な血小板部分を抽出して体に戻し、ケガや痛んだ組織を修復する再生医療の一種です。
大谷選手も肘の故障の時にPRP療法を行ったことをご記憶の方も多いかもしれません。
整形外科分野などでは、軟骨などがすり減った場合やスポーツ外傷の場合など関節内に注入して血小板に含まれる成長因子の力で組織の修復を促します。
生殖領域では主に子宮内に注入し、様々な成長因子の力で着床を促進することを目的とします。
どんな方が対象ですか
当院が対象と考えているのは、子宮内膜がなかなか厚くならない方です。一般に体外受精で胚移植する場合、内膜の厚さは最低7mm必要だとされています。
過去に流産処置を繰り返した方や、子宮からの大量出血のため子宮動脈塞栓術をした方などのなかに、エストロゲンを補充してもなかなか7mmに到達しない方がいます。また、もともと内膜が厚くならない方もおられます。まずはそういった方を対象に考えています。
また、内膜が十分厚くなる方でも、形態良好な受精卵をくり返し移植しているのになかなか着床しない、難治性の着床障害の方も対象に考えております。
治療の手順ですが、ご自身の血液を約20ml採取し、PRPを分離する特殊なチューブに移して遠心分離します。その後、不要な部分を取り除き、血小板が豊富に含まれる部分を約0.5ml注射器に吸引します。そして子宮内にカテーテルを用いて注入します。
現在のところ、ホルモン補充周期の10日目か11日目に1回目を行い、その48時間後に2回目を行う予定としています。
血小板から産生される、PDGF(血小板由来成長因子)、TGF(血管新生促進因子)などの成長因子は、子宮内膜環境の改善を促すことが報告されています。これらの成長因子を多く含むPRP投与は、子宮内膜における細胞増殖、血管新生を良好にサポートすることで、胚着床率や妊娠維持の改善に期待できると考えられています。また、PRP療法の効果は、移植周期(1周期)のみにとどまらず、次周期で採卵を行った場合にも採卵数の増加などの効果があったとの報告もあるようです。
不妊症領域での治療の歴史はまだ十分ではなく、過度な期待はいけませんが、今後に期待したい治療法の一つです。