全胚凍結後、次の周期ですぐに移植しても大丈夫?
こんにちは、培養室です。
気がつけば世間はシルバーウィークらしいですが、当培養室はいつも通りお仕事を頑張っております! 何とはなし朝夕が涼しくなってきましたので、体調を崩さないように気をつけてお過ごしください。
「凍結保存した胚はいつまで保存できるのか?」というご質問には、「理論上半永久的に保存が可能ですが、移植が可能な時間(生殖可能年齢)には限りがあります」という風にお答えしています。病気等の理由により長期的な卵子保存を経て、妊娠出産に至った症例には過去何度かコラム上でご紹介させていただきました。移植予定を後ろに下げることに関して、適切な環境を整えている限り胚に大きなダメージが蓄積されることはまずありません。
それとは逆に「全胚凍結後、すぐに移植をしても大丈夫なのか?」という質問をいただくことがあります。今回は、そのことについて調べた論文を見つけましたのでご紹介しようと思います。
The effect of an immediate frozen embryo transfer following a freeze-all protocol: a retrospective analysis from two centres.
Human Reproduction, Vol.31, No.11 pp. 2541–2548, 2016
ベトナムとベルギーの2施設で、2010年10月〜2015年10月の間に行われた333周期を対象に調査が行われました。採卵周期で全胚凍結を選択し、直後の周期で移植を行なった群と、少なくとも一周期以上期間を空けてから移植を行なった群とで比較しています。直後に移植した周期と、遅れて移植した周期の患者背景に大きな違いはありませんでした。いずれの移植周期も子宮内膜の調整はホルモン補充で行なっています。
臨床妊娠率の段階で直後に移植した周期52.9%、遅れて移植した周期41.6%という結果になり、直後に移植した周期の方が優位に成績が良いことがわかりました。その他にも細かい情報を加味して結果、オッズ比は0.63倍、直後に移植する周期に比べてオッズ比が低下する結果となりました。
当院では基本的に、ホルモン値や卵巣の状態が問題なければ採卵直後の周期でもどんどん移植を行なっています。一周期空けなくても大丈夫? と心配されている方には、ご安心いただける資料になるのではないでしょうか。
ご希望のタイミングでの移植周期を練っていきましょう。