受精卵での前核の役割は?
こんにちは、培養室です。
今回は学会のお話です。
昨年から続くコロナ禍の影響で、私たちが症例の報告や新たな知見を収集するために参加する学会にも影響が出ています。昨年は、ほぼ全ての学会がオンライン開催となりました。普段であれば全国様々な場所で開催されるので、移動の必要がないオンライン開催はメリットの一つだったと思っています。興味深い発表があったので紹介したいと思います。内容は受精卵での前核の役割についてです。
受精卵には通常雄性前核(男性側)と雌性前核(女性側)が確認できます。
発表された先生方のチームは、雌雄前核の存在意義について研究されていました。前核は雌性前核と比較して雄性前核側が大きいこと言われています。雄性前核が大きい理由を調べるための実験が行われました。雄性前核を取り除くと雌性前核は大きくなり、細胞が大きくなればなるほど前核は大きくなる傾向が分かりました。
雄性前核は雌性前核の大きさを意図的に小さくしているようでした。前核同士の大きさの調整は、その後の遺伝子発現にも影響があることからも前核の確認は非常に重要な観察項目になります。一方で1PNと呼ばれる受精卵に前核が一つしかない時は、遺伝子の発現がうまくいかず胚発育に影響を与えます。胚盤胞へ到達した1PN由来の胚は妊娠・出産例が報告されていますが、解明されていない部分も多いと思います。今後も知見を積み上げていきたいと思います。