40歳以上の採卵周期、顕微授精 vs 体外受精
こんにちは、培養室です。
今日5/10は、有名なドリンク剤の所以で「ファイトの日」と呼ばれているそうです。いよいよ汗ばむ日も増えてきて、気合いを入れ直すのにはちょうどいい頃合いなのかもしれませんね。
さて、顕微授精(ICSI)と体外受精(cIVF)はどちらにするべきか? これは時として非常に難しい問題です。前回のコラムでは両方やるって方法もありますよ(split法)というお話をしました。また、年齢が上がるほど「確実性を上げるために顕微授精をしましょう」という言葉が聞かれるようになりますが、これは本当でしょうか?
ICSI versus Conventional IVF in Women Aged 40 Years or More and Unexplained Infertility: A Retrospective Evaluation of 685 Cycles with Propensity Score Model
この論文は、2012〜2018年の間に原因不明不妊で40歳以上の女性をパートナーに持つカップル685組を対象に、顕微授精と体外受精(cIVF)の累積生児獲得率を調べています。
女性には生理周期(排卵)がきちんと確認できることや少なくとも片側の卵管が通っていること、パートナー側では精液所見がWHOの基準値を満たしていることを最低条件に調査を行なっています。81組はたまごが採れずに周期が終了し、残りの604組のうち顕微授精が307組、体外受精(cIVF)が297組に対して実施されました。
顕微授精 | 体外受精(cIVF) | |
実施 | 307組 | 297組 |
獲得生児 | 45人 | 43人 |
重度の男性不妊に対する切り札として導入された顕微授精ですが、実施の割合は年々増加しています。
論文内で紹介されているところによると、2000年には全体の47.6%だった顕微授精は、2010年には66%に到達し、国によっては90%を超えているのだそうです。これは、男性不妊が急激に増えたというわけではなく、不妊原因に男性因子がないカップルにも顕微授精が適応されるようになってきたためです。
こと年齢を重ねた女性の場合に関して、たまごの状態を危惧して顕微授精が提案される一方で、男性因子がない場合の顕微授精の有効性について、顕微授精が良いとする明確な報告はありません。今回の調査では、不妊期間や治療の長期化が顕微授精群側に見られたため、治療回数などの因子を排した上で再検討が行われました。
その結果、顕微授精群、体外受精(cIVF)群の間で生児獲得率に有意な差は見られませんでした。