着床率を上げる方法〜assisted hatching法について
こんにちは、培養室です。
今回はAHAについてご紹介します。
AHAとは
AHAは正式名称をAssisted Hatching(孵化促進法)といいます。
これは胚移植の前段階で、胚を包んでいる透明帯の一部または全体を切除したり、薄くしたりすることで胚を孵化しやすくしてあげる処理のことをいいます。
体外受精の現場では日常的に行われていますが、この処理を行うことにより若干多胎率が上がるといわれています。
何故AHAをするの?
通常、胚盤胞まで発育した胚は拡張していく過程で透明帯を破って脱出し、子宮内膜に着床することで妊娠が成立します。
しかし、年齢因子や体外受精における凍結処理をすることにより透明帯が固くなってしまうことがあると言われており、それによる孵化失敗を防ぐために主に凍結胚移植の前にAHAが行われています。
AHAの方法色々
透明帯の処理はいくつかの方法があるのでその一部をご紹介します。
- PZD…囲卵腔(透明帯と胚細胞の間の空間)の広い部分をマイクロピペットで穿刺貫通する方法
- 酸性タイロード…マイクロピペットで酸性タイロード液を吹きかけて透明帯を溶解する方法
- レーザー…顕微鏡の下部からレーザーを照射して透明帯を切除する方法
現在では、レーザーを用いたAHAが胚への影響が少ないため一般的になっており、当院でもレーザーでのAHAを行っています。
最近発表されたAHAに関する論文です。
この論文ではICSIをした凍結胚を移植する際、AHAの有無で着床率や臨床妊娠率に差が出るかを調べています。
その結果、統計的有意差はないものの、どちらにも改善傾向が見られた、とのことです。
AHAに関しては考案から20年以上経った現在でも、有効性についての議論の決着は見られていません。しかしながら、全ての症例に有効という訳ではないものの反復不成功例や凍結胚移植に関しては有効性があるものと考え当院でも積極的に行っています。
適応は凍結胚移植での反復不成功例を基本としていますが、その他の方でも希望があれば対応させていただいておりますので、気になる方は診察時に医師にご相談下さい。