初期胚のグレード 〜フラグメント〜
こんにちは、培養です。
今日は初期胚移植のグレード(評価)の付け方、特にフラグメントに焦点をあてて説明させていただきます。
初期胚のグレード(Veeck分類)
初期胚は以下の3項目の状態を確認し、総合的にグレードを付けます。
①分割速度 (成長の速さ):2日目では4分割程度、3日目では8分割程度が望ましい分割速度とされています。
②割球の状態 (細胞の状態):割球に大小がなく、均等な割球形態が良好とされています。
③フラグメントの割合:フラグメントとは分割過程で形成される小さな細胞の粒です。全体に対するフラグメントの割合を評価しています。
形態良好胚(割球の大きさが均等で、フラグメントがほとんど見られない)
形態不良胚(割球の大きさに大小があり、フラグメント(緑の斜線部分)が多数存在する胚)
フラグメントに関して
フラグメントが10%未満であれば、その後の発育に大きく影響しないといわれており形態良好と判断されます。しかし25%以上を占めるような胚では着床率が低いといわれています。
具体的には
フラグメント中にも、胚の成長に必要な細胞小器官やタンパク質などが含まれています。フラグメントが生じることにより、胚の細胞質が一部失われることになります。生じる量が多いと胚を構成している細胞成分が減少してしまうため胚の生存能力が低下すると推測されます。
フラグメントと割球が連絡を保っている間は、割球に吸収される可能性もありますが、多くの症例ではフラグメントの割合が高くなるにつれ、胚盤胞に至る割合も低下します。
原因は?
紡錘体の異常、染色体異常、卵巣過剰刺激や加齢など様々な要因が考えられます。
また厳密なpH、温度、酸素濃度などの管理下で培養していますが、それらの微妙な変動もフラグメント形成の要因の1つといわれています。
胚に与えるストレスを減らす一環として
培養環境の変動を最小限にするため、インキュベータ(培養器)扉の開閉を極力減らし、培養環境の維持を心がけております。
他にも、インキュベータ外での観察時間の短縮など様々な思考をこらして作業しております。今後も、胚にとってよりストレスの少ない環境を保てるように努力して参ります。
グレードや培養に関するご質問がございましたら、ご遠慮なくお問い合わせ下さい。
(参考資料)
・生殖補助医療 胚培養の理論と実際
・体外受精ガイダンス