着床の適切な時期は? インプランテーションウィンドウについて
こんにちは、培養室です。
今回は、着床に深く関わる「インプランテーションウィンドウ」のお話をしようと思います。
インプランテーションウィンドウ
最初の前提として、たまごは胚盤胞まで発育しなければ着床できません。
初期胚移植や一般不妊治療の場合、実際に見ることはできませんが、妊娠が成立しているのなら必ず胚盤胞まで発育しています。
同時に、着床される子宮内膜側にも条件があって、特定の時期を外すとたまごを受容できないのです。子宮内膜がたまごを受容できる時期を指して、「インプランテーションウィンドウ(Implantation window)」と呼んでいます。日本語で「着床の窓」と呼ぶ場合もあります。
子宮内膜の受容期には、子宮内膜組織に特殊な細胞構造が出現し、また特定物質の分泌が増えるなど、着床に向けて様々な準備が行われています。従来の知見から、LHサージ後7日前後、もしくはプロゲステロン(P)分泌から5日前後であることもわかっています。この時期より早すぎても、遅すぎてもダメです。
移植のスケジュールは、この時期に基づいて計画されています。(下図)
例えば胚盤胞移植の場合
- 自然周期:LHサージを点鼻薬等で起こしてから7日後
- ホルモン補充周期:プロゲステロン製剤の服用を開始してから5日後
初期胚移植の場合は、移植した胚が胚盤胞まで発育するのに掛かる日数をインプランテーションウィンドウの時期から遡って移植を行います。
着床しない原因
その一方で、形態良好胚(グレードの良いたまご)を繰り返し移植しても、着床しない方もいらっしゃいます。胚の染色体異常、子宮粘膜下筋腫などの筋腫や癒着……着床しない原因は様々ですが、胚移植のタイミングとインプランテーションウィンドウのズレも、その中のひとつに挙げられます。
経験的に「その頃」だと判っていても、全員にピッタリ当てはまるわけではありません。更に「インプランテーションウィンドウがズレているのかもしれない」と推測することはできても、実際の時期を調べることは非常に困難です。そのため、その対策として同じ周期の違う日に複数の胚盤胞を移植するなどの工夫を凝らす場合もありました。
しかし、近年、インプランテーションウィンドウ——子宮内膜組織の着床能を調べることができる検査が開発され、注目を集めています。
次回のコラム(培養室)更新内容
子宮内膜の着床能を調べる検査、ERAをご紹介します。