カルシウムイオノフォアとGM-CSFの相乗効果
Journal of Assisted Reproduction and Genetics / January 2017, Volume 34, Issue 1, pp. 33–41
内容
カルシウムイオノフォアは、細胞内のカルシウムイオン濃度を上昇させることで受精や胚の成長(細胞分裂)を促進させることがすでに報告されています。また、顆粒球単球コロニー刺激因子(GM-CSF)が受精後の胚が成長する力を高めることも、すでに報告されています。
本報告では、この二つの方法を単独で行うのではなく一緒に行なうことで卵子を活性化し、受精後の胚の成長を促進する相乗効果が得られるかを検討しています。
検討した結果、ICSIを行ない受精しなかった卵子に対してカルシウムイオノフォアを単独で行うよりも、カルシウムイオノフォアとGM-CSFを一緒に行なう方が受精後の成長が良く、胚盤胞まで成長する割合が多くなりました。さらに、得られた胚盤胞を染色体が正常かどうかを調べたところ、染色体が正常である割合が高い事が分かりました。これらのことは、カルシウムイオノフォアとGM-CSFを一緒に行なうことで相乗効果が得られたことを示しています。
また、ICSIを行ない受精しなかった患者様にとっての心理的負担を少しでも軽減できるのではないかと思います。さらに、形態的に良好で染色体が正常な胚盤胞を得ることができれば、凍結もしくは移植、妊娠の機会が増えることも期待されます。その他にも、胚盤胞まで成長しない、もしくは、成長しにくい場合(発育不良症例)に成長の改善を目的として行なう価値があるかもしれません。実際に行なう上で、本報告以外に他の文献でも報告されていること、さらに、妊娠率、出産率、児への影響についても検討されていることが条件になると思います。
当院では、すでにカルシウムイオノフォアを実施しており、独自のプロトコールを確立し成果を得ています。本報告をきっかけに、当院でもカルシウムイオノフォアとGM-CSFを組み合わせた方法も検討していきたいと思います。