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多前核について

こんにちは、培養室です。

前回のコラムの中に、多核胚(分割割球内に2個以上の核がある胚)についての記載がありました。

 

今回は、受精時に見られる多前核胚について紹介します。

 

正常受精

正常受精とは、2つの前核と第2極体の放出が確認された状態です。

受精の判定は、通常の体外受精/顕微授精(媒精)の翌日に行います。

多前核

多前核とは、3つ以上の前核が確認される状態であり、正常な受精ではありません。

 

多前核は通常の体外受精で起こりやすく、正常卵に精子が2つ侵入して受精した場合、3つの前核が形成されます。(卵1+精子2)

顕微授精では精子1つを注入するため、多前核は起こらないと思われるかもしれません。 しかし、正常卵に精子1つが侵入した後、第二極体の放出(卵子減数分裂の再開による核の数あわせ)が障害された場合、3つの前核が形成されます。(卵2+精子1)

 

多前核の場合、培養を続けてもほとんどの胚は正常に発育しません。

一部の多前核胚は胚盤胞まで発育しますが、移植や凍結は行いません。

胞状奇胎や部分奇胎になる可能性があるため、多前核と判断した時点で赤ちゃんになる可能性のない胚として培養を中止します。

 

なぜ?

『卵が原因でしょうか?』と質問を受けることがありますが、必ずしも卵だけに原因があるわけではありません。

1つの精子の中に2つの核が含まれることもあり、精子が原因である場合や双方が原因である場合もあります。

 

原因の特定はできません。

 

私だけ? 次の周期も多前核になりますか?

正常受精でないと聞くとがっかりしてしまうと思いますが、多前核胚はよく見受けられます。

基本、多前核は習慣的に起こるものではありません。

 

しかし、抗セントロメア抗体の抗体価の高い人は多前核が発生しやすいといわれています。 抗体価は血液検査により調べることができ、当院ではIVF前の採血検査で調べています。

 

・通常の体外受精で多前核が高頻度、高割合で確認される場合、医師より顕微授精の提案をさせていただきます。

・抗セントロメア抗体価の高い場合は、採卵周期に免疫抑制作用を持つお薬を処方する場合があります。

 

培養室でも正常受精率が上げられるよう、改善や工夫を行っていきたいと思います。

卵や精子に関する疑問がありましたら、培養士におたずね下さい。

 

〜文章中の用語解説〜

通常の体外受精:卵子に適切な数の精子をふりかけて受精させる方法。

顕微授精:卵子の細胞質内に精子を1つ人工的に入れて受精させる方法。

前核:卵子側、精子側の核のこと。それぞれの核が接近して融合するまでの核の名称。

極体:卵子の中からはじき出された核のこと。核のみを含んだ小さい細胞。

第1極体:卵子の減数分裂休止前に放出される核のこと。

第2極体:精子が侵入し、卵子の減数分裂が再開すると放出される核のこと。

抗セントロメア抗体(ACA):抗核抗体(ANA)の1つであり、核の一部のセントロメアに対する自己抗体。

この記事を書いた人

培養室

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不妊治療・体外受精専門のなかむらレディースクリニックの医師や培養士が監修

なかむらレディースクリニックは、不妊でお悩みの方々に安心して不妊治療、体外受精をうけていただくためのクリニックです。朝8時から診察し、平日は木曜日を除いて夜7時まで受付をしています。日曜日、祝日も年末年始以外休まずに診察し、多忙な方でも相談していただきやすい不妊治療を目指しています。

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